……あれ?
しばらくたっても、なんのアクションもない。
だんだん不安になってきて、さりげなく顔の向きを変える。
そしてうっすらと目をひらこうとしたとき。
「──────これで満足?」
落とされた、低くて抑揚のない声。
びっくりして顔をあげると、無表情の茶屋くんがわたしを見下ろしていた。
怒ってるでもなく、呆れてるでもない……見たことない、顔だった。
「見せかけの表情じゃダメなわけ?」
「ちゃ、茶屋くん……」
「よかったね。麦生さんの粘り勝ち」
いつもならここで笑顔を貼りつけそうな茶屋くんは、いまは感情を失った人形のように真顔のまま。
あ、とわかってしまう。
……茶屋くんは仮面をはずしたんだ。



