「茶屋くん、ちょっといい?」

「……どうしたの麦生さん」

「わからないところがあって」



授業中、数学の時間。

あまり得意じゃない計算の問題を、こそっと茶屋くんに教えてもらおうとした。


これはあくまでもとなりのよしみ。


茶屋くんはじっとわたしの手元にあるプリントを見たあと、




「どこ?」

とすこしだけ身をこちらに寄せてくれた。



「ここなんだけど、当てはめる式がわからないの」

「ああ。これは先に解かなきゃいけない部分があって、」


ペンを持ち上げたから、解き方を書いてくれるのかと思ってプリントを差しだした。



でも、茶屋くんが選んだのはわたしのじゃなくて、自分のプリント。

すでに答えが書かれているそれに、必要のない解き方が書き込まれていく。



……それは無意識ですか。

それともワザとやってるんですか茶屋くん。