きっかけは些細なことだった。


となりの席になって、うっすらと気になりはじめたんだ。


あれ?なんか茶屋くん、だれかに笑い方似てるな……って。



それは思い過ごしじゃなく、やっぱり茶屋くんの笑い方は、テレビでよく見る芸人さんのそれに似ていた。



最初はぐうぜんかなって思ってたんだけど。



その数日後。

彼の照れ方が人気の俳優さんに似ていることに気づいてしまえば、あとは芋づる式だった。



泣き方も、驚き方も、怒り方も。

ぜんぶぜんぶ、どこかで見たことのある“表情”ばかりだったんだ。


まるで何枚もの仮面をかくし持っていて、瞬時に貼りかえているみたい。




『茶屋くんって、あの俳優さんに似てるよね』


前にいっかいだけ聞いてみたことがある。

茶屋くんは動揺もせずに『そうかな?』って答えただけだった。




その日からだ。茶屋くんがわたしの目を見てくれなくなったのは。