先ほど、アイリーシャに突っかかってきたヴァレリアもエドアルトを取り巻く令嬢達の中に混ざっていた。

「……殿下ってばあいかわらずね」

 遠巻きに今日の主役の様子を見ていたら、ダリアがぼそりとつぶやいた。

「あいかわらず?」
「ほら、皆冷たくあしらってるでしょ。あまりにも冷たいから、絶氷の貴公子なんて言われているの」

 たしかに、エドアルトを取り巻く令嬢の数は多いけれど、誰にも笑みは向けていない。それどころか、問われたことにもぶっきらぼうに返すだけで、誰とも距離をおいているようだ。
 彼の周囲には、透明の壁が張り巡らされているようにも見えた。

(たしかに、絶氷の貴公子……ね……)

あんなに無表情で、恋人とかできたらどうするつもりなのだろう。アイリーシャが心配しても、意味のないところではあるけれど。
それにしても、多数の人がいる広間は少しばかり暑い。もうすぐ王の登場だし、それまでの間に涼んできた方がよさそうだ。

「私、ちょっと外の空気を吸ってくる」
「私達も一緒に行きましょうか? 不用心だもの」

 ミリアムがそう言ってくれるのには、首を横に振った。