「う、うん」

 友人になったばかりのダリアとミリアムが声をかけてくれる。アイリーシャは、改めて周囲の視線が自分に注がれているのに気付いた。

(……って言うか!)

 こんなにも見られていたのか。王子の婚約者筆頭ともなれば、ますます周囲の視線はアイリーシャに集中することになるのだろう。
――でも。
不思議と自信がわいてきた。
今、ミカルも言っていたではないか。アイリーシャには魔術の才能がある、と。
それに、神様自ら指導にあたってくれるというのである。
完璧に隠れることさえできたら、怖いものはない。

(――よし、頑張って隠れるぞ!)

 王太子殿下の婚約者候補だなんて聞いていなかったけれど、目立たず過ごしていればきっとやり過ごすことができる。
神様との修行を一生懸命やって、全力で隠れることに集中しよう。
 アイリーシャは、自分が間違った方向に走り始めているのにはまったく気づいていなかった。
記憶を取り戻して一日目。早くもずいぶん馴染んでしまったようである。