しかも、前世でもかなりのお嬢様だった。前世の名は、天花寺愛美。旧華族の流れをくむ日本国内でも有数の富豪、天花寺家の一人娘として生きていた記憶がある。
そんなお嬢様の割に、若干――いや、かなり――俗っぽいのは、高校から入学してきた外部生の親友の影響だった。
彼女のおかげで、ゲームにはまり、隠れてプレイした日々。
一度成績が急降下しかけて、慌てて家庭教師の講義の回数を増やしたもいい思い出……とは言えないにしても、ゲームを取り上げられないように頑張った。
 "聖槍の戦乙女"、それは、前世のアイリーシャが、転生先として望んだゲームだった。
 戦乙女という物騒な単語が出てくる割に、恋愛シミュレーションゲームである。
 プレイヤーは、世界を滅ぼす魔神に対抗するための戦乙女となり、戦いに身を投じる中で、様々な魅力的なキャラクターを知りあっていく。

(あとは、地味に目立たず……無事に、聖女としての役割を果たせばオッケー。三百年後の未来に期待っと……)