たしかに、彼はアイリーシャを利用していたのかもしれない。多数の犠牲を出して、自分の野望を果たそうとしたのも否定できない。
 ――でも。
 十年もの間、彼に師事して、アイリーシャが得たものもたしかに多かったのだ。たしかに彼は過ちを犯したし、それは償うべきものであるけれど。

「それじゃあ、まあ、そういうことで。あ、また違う魔神が来るかもしれないから、その時はまた力を借りることになると思うよ」
「え? 今回だけじゃないの?」
「今回だけのはずないじゃん。魔神が一柱しかいないって誰が言った?」
「……うそぉ……」

 最期に飛んでもない爆弾を落とすなり、ミカルを背中に乗せた神様は、煙のように消えてしまった。

(……でもまあ、しかたないわよね)

 一度引き受けた役目を勢いよく放り出すわけにもいかないだろう。そんなの、アイリーシャの矜持が許さない。

(あ……次の世代の戦乙女を導くって……ひょっとしたら)

 三百年後、新しい戦乙女が姿を見せた時。彼女の側に、一人の青年の姿がある。彼の顔は表示されず、後姿しか、画面には描かれなかった。
 攻略対象者ではなく、あくまでも協力者の一人。