前の人生でも、同じように多数の使用人に囲まれて生活していたけれど、思いやりの心だけは忘れないようにと母から厳しく言い渡されていた。
いずれ、家を継がなければならない。だから、使用人達に甘く見られてはならない。必要以上に恐れられてもならない。思いやりを持ち、礼儀正しく接するように、と。
なにせ、中身は十八歳である。自分の気持ちはある程度制御できる。
「ミルクのお代わりがほしいの。ミルクがないから、チョコチップのクッキーが食べられない」
「あらあら、まあまあ、急いで取ってきますね」
立ち上がった乳母は、母が輿入れする時、実家から一緒についてきたのだそうだ。
母の出産後には、乳母の役を果たすことも期待されていて、母の輿入れと同時に、公爵家の使用人と所帯を持った。
「お嬢様、暑いですか? ミルクが届きましたよ」
「ううん、暑くない。ありがとう!」
届けられたミルクのカップを、両手で大事に抱え、ちまちまと皿によそわれたクッキーを齧る。アイリーシャの目の前では、ガーデンパーティー用の正装に身を包んだ男女が行ったり来たりしていた。
いずれ、家を継がなければならない。だから、使用人達に甘く見られてはならない。必要以上に恐れられてもならない。思いやりを持ち、礼儀正しく接するように、と。
なにせ、中身は十八歳である。自分の気持ちはある程度制御できる。
「ミルクのお代わりがほしいの。ミルクがないから、チョコチップのクッキーが食べられない」
「あらあら、まあまあ、急いで取ってきますね」
立ち上がった乳母は、母が輿入れする時、実家から一緒についてきたのだそうだ。
母の出産後には、乳母の役を果たすことも期待されていて、母の輿入れと同時に、公爵家の使用人と所帯を持った。
「お嬢様、暑いですか? ミルクが届きましたよ」
「ううん、暑くない。ありがとう!」
届けられたミルクのカップを、両手で大事に抱え、ちまちまと皿によそわれたクッキーを齧る。アイリーシャの目の前では、ガーデンパーティー用の正装に身を包んだ男女が行ったり来たりしていた。


