「ここは……? ヴァレリア、私はどうしてここにいるのかしら?」
「お母様! お父様にすぐ連絡するわね!」

 目を開いたフォンタナ公爵夫人が、ヴァレリアに問いかけるのを耳にしながらそっと部屋を出た。

(普通の親子って、ああいうものよね)

 アイリーシャの両親達も、もし、アイリーシャが倒れたら同じように嘆くだろう。

(あとは、教会が神官を派遣している家を一軒一軒回るしかないわね……)

 このために、神官長の協力を得たのだ。
 聖獣のルルを連れ、すべての家を回るのに一週間かかった。
 アイリーシャに聖女という呼び名がつくまでは、さほど時間はかからなかった。