そこには、ベッドがずらりと並んでいる。皆、ぴくりとも動かない。
 回復魔術をかけることによって、かろうじて命をとどめているという状況だ。

「まずは、こちらの女性を」
「――呪いを、解除します」

 アイリーシャは、目を閉じたままぴくりともしない女性の胸に両手を置いた。

(――大丈夫、できる)

「戦乙女の名において、悪よ立ち去れ!」

 他の人には聞こえないよう、小さな声でつぶやく。身体からぐっと魔力が引き出され、女性の身体に流れ込んでいくのがわかった。
 アイリーシャの手が白く光り輝き、その光は女性の身体全体を包み込む。

「――終わりました」

 アイリーシャがそう口にするのと同時に、女性は目を開いた。

「ここは……?」
「あなたは、倒れたんですよ。ここは教会です。まだ、本調子ではありませんから、ゆっくり養生してくださいね」

 アイリーシャの言葉が理解できているのかいないのか。彼女はこくりとうなずいた。
 アイリーシャは次のベッドに横たわっている人の方へと歩み寄る。
 また、同じことが繰り返された。呪いを解いて回りながら、考える。