転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく

「あ、我も大変なんだった。えっとね、アイリーシャ。君にやってもらわないといけないことがあるんだけど、また来るよ。前人間に渡した槍が見つからなくてさぁ」
「見つからないって!」

 たぶん、それって聖槍のことでは――いや、間違いなくそうだ。それが見つからなければ大変なことになる。

「ええと、ルル。あとは頼んだ。じゃあね」

 じゃあねって、そんな軽い……。
 呆然として見送っていると、ルルがアイリーシャの前で頭を下げる。

「大丈夫、頼まれた」
「ああもう、ルルってばなんていい子なの!」

 アイリーシャは、ルルをぎゅっと抱きしめた。柔らかな毛並みに顔を埋めるとホッとする。

「アイリーシャ……神に頼まれたからというわけじゃなくて、俺にも君の手助けをさせてくれ」
「いいんですか?」
「もちろん」
「ありがとうございます」

 アイリーシャは微笑んだ。
 自分が望んだのとは違う形だけれど、アイリーシャにもできることがある。

「まずは、呪いをかけられた人を助けて回りましょう。神殿に、何人かいるそうですからまずはそこから」

 けれど、今はそんなことを考えている場合ではない。