転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく

 首を傾げ、神はこちらを見つめる。左右で色の違う瞳に見つめられ、落ち着かない気分に陥った。胸に手を当て、深呼吸を繰り返す。

「……あ」

 言われるまで気づかなかったとは、どうかしているみたいだ。身体になじんだ四つの属性。その他に、もうひとつ。今まで知らなかった魔力がある。

「――これは」
「うん、それが神聖魔術。神が君に授けた力だよ。まあ、神って我のことなんだけど。聖獣と契約してないと使えないんだよねー」

 十年ぶりくらいの再会なのに、神様の態度はあまりにも軽い。
 それでも、彼にいろいろ教わっていた頃のことを思い出して、懐かしくなった。

「でもさあ、君、その力に目覚めてしまったら今後うんと大変になるんだけど大丈夫?」
「……全力で隠れる。だって、あなたに教わったんだから」

 アイリーシャがそう言うと、ふぅんと首を傾げ、神様はエドアルトの方へとことこと歩いていく。

「あの子を助けてあげてくれる?」
「神様!」
「あの子、これからすごい大変だから」

 もう一度神様をたしなめようとしたけれど、彼はそこで動きをとめた。