転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく

 どうして、今まで姿を消していたのだろう。神様のくせに、アイリーシャに何も教えてくれないで。

「神様? これが?」

 ルルにせがまれるままに撫でていたエドアルトが、こちらを振り返る。

(というか、猫がしゃべっているのに動じないあたり大物だわ……!)

 アイリーシャは、素直に感心した。

「エドアルト様、気持ちはわからなくもありませんが、神様です」
「やあだって、この姿だと人間が可愛がってくれるしな」

 それでいいのか、神なのに。
 前世の自分がよみがえって、勢いよく突っ込みそうになったがこらえた。今、そんな場合ではないことくらいよくわかる。

「神様、今までどこで何をしていたの? 大変だったんだから!」

 すっと近づいて来たのを抱き上げる。たしかに重み懐かしかった。

「あのさあ、我、こっちの世界に来るのにけっこう力を使うわけ。我の力も、無限じゃないんだよ?」

 そんなことを言われても。

「神様、今、首都で人がこん睡状態になって目を覚まさないの。どうしたらいいか、知ってる?」