転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく

「――ルルか?」

 近寄ってきたエドアルトも、ルルを見てどう対応したらいいのかわからない様子だ。

「撫でる?」
「あ、いや……」

 そう言えば、ルルはエドアルトに頭を撫でてもらうのが好きだった。彼が来ると、自分から手の下に頭を差し込んでいたくらいだ。

「撫でないの? 撫でないの?」

 身体は大きくなったけれど、気質は子犬のままのようだ。エドアルトの前に伏せた姿勢になって、頭を撫でやすいよいうにした。
 それを見て、頭を撫でないわけにはいかないと思ったらしい。手を伸ばし、そっとルルの頭を撫でている。

「いいなあ、我も撫でてほしい」
「……はい?」

 懐かしい声に、また奇妙な声を上げてしまう。どこからどうやって入って来たのかなんて、この場合気にしてもしかたない。
 ゆっくりとこちらに向かって歩いてきたのは、アイリーシャをこの世界に連れてきた"神"だった。

「よっ、久しぶり!」

 つい数日前に別れた友人と再会したくらいの気安さで、神は右前足を上げる。ルルは大きくなったけれど、神はアイリーシャの知っている姿のまま。

「神様、あのね、あなたいったい――」