転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく

 聖獣の契約者になるには、特に資質のようなものは必要なさそうだ。大切なのは、聖獣と強い信頼関係があること。
 飼い主であるアイリーシャと同じくらい、エドアルトのこともルルは信頼している。それから、アイリーシャの家族達も。
 アイリーシャが頼むと言えば、家族全員ルルと契約してくれるに決まっている。

(――本当に、それでいいの?)

 前世ではどうなった?

 自分の頭で考えることなんてしなかった。ただ、両親に言われるままに、命じられた会に出席し、命じられた人と会った。
 学業もおろそかにせず、部活動も全国レベルの結果を残すほどに頑張った。
 唯一の息抜きは、寝る前にほんの少しだけ楽しんだゲーム。
 まさか、あんなことで死んでしまうと思っていなかったけれど、自分が愛した世界を守ることができるというのに、何を恐れるというのだろう。

(――まずは、私がやってみるしかない)

 だって、アイリーシャが契約をすることができるとは限らない。

「まずは、私がやってみます。私がだめなら、家族に頼んでみます。それでもだめなら……エドアルト様にお願いしてもいいですか?」