二人がてきぱきと残されている書物や、代々の神官が書き残した資料を調べていくのを、扉のところから苦々しい顔で神官長は見ていた。

「――こんなところを見て何になる」
「教会に収められる寄付金が減ったら困るという以外に、邪魔をする理由があったのか?」
「べ、別に、そういうわけではありませんぞ」

 神官長は、そわそわとしている。

(……何かやましいことでもあるのかしら)

 この人は、やましいことがたくさんありそうな気がする。と身も蓋もないことを思う。その間も手は止めなかった。

「君の方にはなんと書いてある」
「聖なる獣を呼び出し、契約をすることができれば、その者は呪いを解除する力を持つ、と。エドアルト様の方は?」
「聖獣との契約の結び方だな。王宮の奥に、日頃は王族しか入れない場所がある。そこで契約を結ぶ儀式を行ってきたそうだ」

 ならば、なぜ、その書物が王宮ではなく神殿に保存されていたのだろう。
 その時には、まだ、王族と神殿の仲はさほど悪くなかったということだろうか。

「でも、誰が契約を結ぶかが問題ですよね……それに、聖獣なんていないし」

 アイリーシャは考え込んだ。