エドアルトの差し出したのは、彼自身が動いて、神官達から丁寧に話をした結果を書き記したものだった。そして、神殿が不当に高く値を吊り上げた証拠も。
 これが世の中に公表されてしまったら、神官長は今の地位にとどまることはできないだろう。彼についていく人間が、何人残るのかも不明だ。

「何が、ご希望ですか?」
「聖獣に関する書物を出せ。それと、回復魔術の価格は今すぐもとに戻せ」

 エドアルトの言葉に、神官長は顔をしかめたけれど、王太子に逆らうのは得策ではないと踏んだのだろう。

「そちらの、ご令嬢は?」

 それでも、アイリーシャの存在は気にかかったらしい。今まで口も開かずにいたというのに。

「彼女は、俺の協力者だ。ここに置いてある本の中で、何が有用なのか俺にはわからないからな。一緒に来てくれ」

 命じられるまま、アイリーシャは奥へと足を踏み入れた。
 神官長の部屋の奥が昔からの記録が残されている書庫となっていて、アイリーシャとエドアルトは、迷うことなくそこに足を踏み入れる。

「私、これを見てみます。殿下の方は、王家に関連した記録がないか見てください」