すぐ上の兄のノルヴェルトが、わりとおちゃらけた感じなのに対して、ヴィクトルの方は心配性だ。
 今も、エドアルトの行動が、神殿に対する威圧にならないかを心配しているのだろう。

(お兄様が心配するのもわかるわ。神殿を敵に回したら……エドアルト様の立場も悪くなる)

 兄とエドアルトの会話には口を挟まず、アイリーシャはじっとしていた。自分にまかされる仕事は、これからやってくるのだから。

「今倒れているのは裕福な者ばかりだが、ここぞとばかりに価格を吊り上げるのは大問題だ。それは是正すべきだ。教会の俺に対する対応なんて、今考えてもしかたない」

 神殿だって、維持管理費用はかかるし、神官達の生活だって守らなければならない。
 信者達の寄付金だけでおさまるわけもなく、治療をするのに金銭のやりとりがあるのも当然だ。
 だが、限度というものがあるし、表向きはいつもと同じ価格でやっているとなると大問題だ。

(――よし)

 もうすぐ馬車が教会につく。アイリーシャは気合を入れなおした。

「――神官長にお目にかかりたい」