ミカルに忠告されたことは、兄にも言えなかった。
 これ以上、エドアルトの側にいたら、彼にもよくない影響が出る。そんな気がしてならないのだ。

「殿下は、気にしないと思うぞ」

 兄の声は聞こえないふりをして、積み上げた本の山を指す。

「こちらの書物は、もうお返ししてもいいと思う。中は確認したけれど、役立つものはなさそう」
「わかった。残っている記録ってのもいろいろだからな」

 昔から体系的に資料をとりまとめるなどということはしたことがなかった。王立魔術研究所の資料でさえ、解読が終わったものから順に整備しているというところだ。
 エドアルトが地方の貴族達からかき集めてくれた資料の中には、民間療法だの、その地方の伝承をまとめたものなども含まれている。
 必要があれば、再び借りることもあるだろうと記録をつけてはいるが、今はここに置いておく必要はない。

「――あ、これは役に立つかも」

 先にそれに気づいたのは、ノルヴェルトだった。

「ほら、聖なる獣を呼び出す方法って。でも、その方法はここには書かれてないな……たぶん、首都の教会にあるんだ」