皆、不安に陥っている。この状況を解決するには、どうにかして呪いを解くしかないのだ。

(神殿は、何か知っているのかしら……)

 倒れているのは、財を持つ者ばかり。
 今回の騒動が発見されてから、神殿は潤っているという。だからと言って、こちらからできることなんて、何もないのだけれど……。
 はぁっとため息をつき、エドアルトが集めてくれた本に手を伸ばす。今は、この中から役立ちそうな知識を見つけ出すしかないのだ。

(もし、私が目覚めていれば話は違ったんだろうけど)

 姿を消した神様は、いつ、アイリーシャが目覚めるとか、どのように目覚めるとか。どんな修行をしたら早く目覚めるとか。
 そう言った話は何一つしてくれなかった。
 自分なりに研鑽を積んできたつもりではあるけれど、まだ未熟で無力だ。

「……殿下から、これ預かって来たぞ」

 王宮から戻って来たのは、ノルベルトだ。彼は、アイリーシャのこともルルのことも信じてくれている。

「お前、殿下にこっちに来るなって言ったんだって?」
「――だって。エドアルト様のためによくないでしょ。これ以上変な噂になったら……」