レベルは十までしかないものだと思っていた。ゲーム内でも、レベルは十まででカウントされていたが、その上があったようだ。

「エクストラレベルになると、相当の達人でない限り気づかないと思う。そこまで行けば、君の望むレベルで目立たなくなるんじゃないかなぁ」
「待って、そのエクストラレベルって、どうやったら到達できるの!」

 再び猫を掴もうとしたら、するりと逃げ出してしまった。

「それは、君が聖女として立つしかないよね。君が聖女になると決めたら、人間では到達できないレベルに到達することができるんだから」
「――やらせていただきます。いえ、ぜひやらせてくださいっ!」
「変わり身早いな、おい」

 たった今、聖女の役目を他の人に押しつけようとしていたアイリーシャの変わり身の速さに、神様も若干引いている。

「自分の人生を思うように生きるためなら、全力で変わりますとも」
「その気持ちはわかるけどさぁ……」

いずれにしても、アイリーシャが三百年後、"玉"としてこの世界に存在するためには、聖女としての役割を果たさねばならない。となれば、覚悟を決めるしかないのだ。