転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく

 彼女達にとってアイリーシャはつぶさなければならない人材なのだろう。
 愚かなのは、アイリーシャが、今、魔術研究所で必要とされている人材であるということを彼女達が忘れているというところか。

(魔術研究所で必用とされているから……)

 自分で口にしておいて、胸がちくりとする。どうして、こんなに気分が沈むんだろう。

(わかってる。こんなことをしている場合じゃないって)

 忘れてきた布を籠に入れ、ぺこりと頭を下げた。

「お騒がせしました。今後は、このようなことがないように気をつけますね」
「気を付けるって……」
「皆、気が立ってるんだと思います。病の原因がわからないから。私達がもっとしっかりしないと――」

 こんなことを言いたかったはずではないのに、胸のあたりがますますぎゅっと締め付けられるような気がしてきた。

「悪かった」
「エドアルト様のせいじゃありませんから。大丈夫です、今度は目立たないように来ますね!」

 どうしてそうしなかったんだろう。