転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく

 今までは、書物の内容を調べ、目録を作るのが主な役目だった。
 そこに、エドアルトが自ら運んでくる書物――国のあちこちから集めてきたもの――が加わる。
 ノルベルトも一緒になって、呪いの解呪の方法を調べているけれど、その量は膨大なものだ。

「無理はさせていないか。顔色が悪いような」
「――な、大丈夫ですっ!」

 テーブル越しにこちらの顔をのぞきこんでくるのはまだいい。テーブルの上に置かれているのは、ペンとノート、そして積み上げられた書籍くらいだ。
 内容を確認したものは後ろの書棚に並べられ、エドアルトを通じて返却するものと、残しておいて改めて調べなおすものに分けられている。
 その山の向こう側から手を伸ばされ、頬に触れられる。とたんに、鼓動が跳ね上がる気がするから、不用意に触れるのはやめてほしい。

(……本当に?)

 やめてほしいって、本当にそう思っているんだろうか。
 ドキドキしている暇なんてないはずなのに、この部屋に近づいてくる足音の中で、エドアルトのものだけ聞き分けることができるようになってしまった。

「大丈夫ならいいんだ。ルルはどうした?」