今回の人生では、愛されている――少なくとも今の段階では。それは、昨日までの記憶からも納得できる。
となれば、最低限の義務は果たしてもいい。そう思ったのだ。

(でも、目立たないでいたいというのは別問題!)

 どうすれば、目立たずにいられるか。
うーんと腕を組んで考え込み、アイリーシャははっと気がついた。

「ねえ、神様。私、隠密スキルを取得できたりしない?」

 もし、この世界がアイリーシャの知る世界とまったく同じシステムで動いているならば。
ゲームの中で、人間の持つ能力は、スキルによって管理されていた。魔術もスキルの一種である。
スキルの中には、"きゅうりの輪切り"なんていうわけのわからないものも含まれていたけれど、スキルを取得するか否かで仕上がりがおおいに変わってくるのだ。
たとえば、"料理"の場合。スキルを持たなくても、調理することは可能だ。家庭料理程度ならば、スキルを取らなくても作ることができる。
だが、飲食店を経営しようと思ったら、料理に関するスキルは必須となる。スキルレベルが上がれば上がるほど、おいしい料理を作ることができるようになるのだ。