転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく

 土属性の魔術の中には、植物から作った薬物の効能を高めるというものもあり、魔術研究所の職員は王宮の薬草園を使うことを認められている。

「――どうして」

 けれど、アイリーシャは何も言えなかった。また、その側にルルがいたからだ。ルルは尾を振って、エドアルトの足にまとわりついている。

「俺にもわからない。こうやって、ルルに会うのは三度目だな」

 三度目。
 偶然にしては少し多すぎやしないか。
 自分の中に浮かんだ懸念を、アイリーシャは激しく頭を振って追い払おうとした。
 どこからどう見たって、ルルは普通の子犬だ。親とはぐれて、汚れて街中をさ迷っていたところをアイリーシャが保護した。
 ヴィクトルが持って帰ってくる、騎士団寮の骨が好きで。その骨をずっと噛んだり舐めたりしていいて、それから自分の宝物を隠している場所に隠していた。

(そうよ、ルルは普通の犬。脱走癖があるだけで)

 そんな風にも思うけれど――でも、それだけでは説明することができない。
 二度目までは偶然として認めてもいい。けれど、三連続となると――。

「ルルは、病人を見つけるのが得意なのかな?」