エドアルトの耳のよさは、どこから来るものなのだろう。飼い主なのに、ルルの鳴き声が聞こえないことにちょっとショックを受けた。

「リーシャ、次は?」
「――そのまままっすぐ!」

 王宮の庭園はかなり広い。走っても走っても端に到着しないのではないかと思うほどだ。先を行くノルベルトが振り返る。

「――このまままっすぐでいいのか?」
「ええと……右!」
「わかった!」

 庭園内の小道が左右に分かれるところで、アイリーシャがぐるりと回る。そうやって向きを確認しながら、何度か折れ曲がった時。
 それは目の前に現れた。

「――殿下、どうしたんですか」
「また、犠牲者が出た。今、人を呼びにやっているところだ」

 エドアルトがかがみこんでいるのは、魔術研究所の所員だった。アイリーシャも挨拶をしたことはある。
 なぜ、こんなところにいるのだろうと思ったけれど、どうやら、薬草園から戻ってくるところだったようだ。彼は、土属性の魔術が得意なことを、それを見て思い出した。