もちろん、アイリーシャが家にいれば一緒に過ごすのだが、ここに来るのにルルを連れてくるわけにもいかない。
 今日は、ルジェクは一日家で仕事をするというから、ルジェクに託してきたのだ。

(――まさか!)

 兄のところからも、逃げ出してきたというのだろうか。

「あの鳴き声、ルルだと思う」

 どういうわけか、エドアルトはルルの声がよく聞こえるらしい。再び横目で窓の外をうかがったエドアルトは、窓枠に手をかけた。

「――え?」

 そのまま、彼はいきなり窓から身を躍らせる。

「あー、行っちゃったか」

 ノルベルトはのんびりしていたけれど、アイリーシャは慌てて窓に駆け寄った。何かあったらと思ったのだが、エドアルトは足を痛めた様子もなく走り去っている。

「ちょ、お兄様! ここ三階! なんで普通に飛び降りてるのよ!」
「んー、殿下だから?」

 可愛く首をかしげても答えになってない。殿下だからというのは三階から普通に飛び降りてぴんぴんしている理由にはならないだろう。

「どこに行ったんだろ」
「あ、わかるかも!」