いつの間にか、天花寺家の娘としてふさわしくあらねばならないということばかり、気にするようになっていたから。
 わぁわぁ泣きわめいていたアイリーシャであったけれど、いつまでもそうしていてもしかたないというのも頭では理解していた。
 気がすむまで泣いてから、顔を上げる。

「……ねえ、神様」
「なんだ?」

(聖女の役は別の人にやってもらうというのもありだと思うのよね……)

 わずかな期待をこめて、神様を見つめる。ついでに首もかしげてみた。

「聖女にならないと、ダメ?」
「そうしないと、モニカには会えないぞ。だって、モニカに使命を伝えるために、三百年後まで魂が残るんだから」

 うーんうーんと唸ってしまう。
 まさか、今回の世界でも、人目にさらされる立場になるとは思ってもいなかった。

(今度は、地味に目立たず生きたかったのになぁ……)

 けれど、転生してしまった以上、今さらなしにはできないのだろう。

「……はぁ」

 子供らしからぬため息をついて、アイリーシャはよいしょと立ち上がった。

「何、君、我のこともっといびっちゃう?」