転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく

 アイリーシャが一人で街中に出かけるのを、両親がいい顔をするはずもない。ダリアやミリアムと出かけるのだって、実はこっそりひっそり護衛がついているのだ。

「それって、問題になりません?」
「昔やった時は、怒られたな……十年前だ」

 十年前と言えば、エドアルトもまだ子供だった。
 王太子殿下が護衛をまいただなんて、たぶん、当時の護衛もめちゃくちゃ怒られただろう。

「今回も、帰ったら叱られることになるな」
「どうして、今日に限って護衛をまいたんですか?」
「自分の目で、祭りの様子を見てみたかったから。護衛がついていると、どうしてもだめだと言われる場所も出てくる。ここは祭りの会場から離れているが、入ることは許されないだろうな」

 エドアルトは、周囲を見回した。ここは神殿の裏手、人の少ない場所だ。おまけに治安のよろしくない地域もすぐそこにある。
 護衛が側にいたら、とめられること間違いない。
 もっとも、ルルが鳴かなければ、こちらに来ることもなかっただろうけれど。

(……そうよね、王子様なら自由なんてあるはずもない)

 アイリーシャは、エドアルトに向けて手を差し出した。