転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく

「そうだな、ルルが話すことができれば一番早い」

 長身を折り曲げるようにして身をかがめたエドアルトは、ルルの頭をなでる。申し訳なさそうに、ルルはぱたぱたと二度、尾で地面を叩いた。

「それにしても、すっかり予定が狂ってしまったな」
「そうですね……なんだか――くたびれちゃいました」

 十年ぶりに首都の祭りに参加した。
 アデルへの見舞いの品を探す予定が、ここまで崩されるとは想像もしていなかった。

(私が、公爵家の娘だっていうのも、あの人達には気づかれていたし……)

 アイリーシャの容姿は、目立つものだし、身に着けているのも町民しては上質過ぎる。おまけにエドアルトと一緒にいたとなれば嫌でも素性が知られてしまうわけだ。
 ひそひそと何事かささやき合いながらこちらを見ている人達に、雰囲気の悪さを覚えずにはいられない。

「俺も、もう少しあちこち見て回るつもりだったんだけどな。そろそろ、迎えが来るだろう」
「そうですね。遠巻きに護衛はついていると思うんですけど……」