転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく

 思わず呆然とつぶやいた。前回といい、今回といい。
 どうして、ルルは人が倒れているのに気付いたのだろう。

「すぐそこが神殿だ。神殿に協力を仰いで、中に運ぼう」

 神殿に務めている神官の中には、医師の資格を持つ者もいる。一番近くで医師を見つけられるとしたら、すぐそこだ。
 アイリーシャが青年に付き添っている間に、エドアルトは神殿まで自ら足を運び、医師を呼んでくれた。

「……これは、間違いなく今首都を騒がせている奇病です」
「どこの住民かわかるか。わからないようならば、首都警備隊の者に探させるが」
「では、警備隊の方にお願いします」

 医師の他、何人かの神官がやってきて、あっという間に患者を運び去る。

「――殿下」

 アイリーシャは不安を覚えた。

(あの人達、何か隠しているんじゃ……?)

 "奇病"と言っていたけれど、神官達は事情を知っているようにも見えた。

「ルル、あなたが話すことができれば、どうしてここに来たか教えてもらえたのにねぇ……」

 患者が運ばれていくのを見送ったルルは、おとなしくアイリーシャの足元に座っている。先ほどまで騒いでいたのが嘘のようだ。