神殿の裏は、建物がごちゃごちゃとしている地域だった。
そこに足を踏み入れかけ、アイリーシャはそこで足を止めてしまう。
(……このあたりって)
十年前、どこの家に連れ込まれたのか覚えているわけではない。けれど、逃げ出した時、同じような街並みを見た記憶があった。
ぶるぶると頭を振って、あの時のことを頭から追い払う。
(大丈夫、大丈夫――だって、私は、あの時よりも強い!)
エドアルトは、右手の方に曲がっていく。彼の後に続こうとして、アイリーシャの耳にも聞こえてきた。
激しい犬の鳴き声だ。
「――ルル!」
エドアルトを追ってその路地に入り込んだ時――そこでの光景に既視感を覚える。
(これは……)
道端に倒れていたのは若い男だった。そして、その側で鳴き声を上げているルル。
公爵邸の中を流れる小川のほとりと下町と。場所も違う。倒れているのも男女で違う。
――けれど。
倒れている青年の側にかがみこんだエドアルトは、唇を引き結んで立ち上がった。
「呼吸はしている、脈もある――意識がない。同じだ」
「……なんで?」
そこに足を踏み入れかけ、アイリーシャはそこで足を止めてしまう。
(……このあたりって)
十年前、どこの家に連れ込まれたのか覚えているわけではない。けれど、逃げ出した時、同じような街並みを見た記憶があった。
ぶるぶると頭を振って、あの時のことを頭から追い払う。
(大丈夫、大丈夫――だって、私は、あの時よりも強い!)
エドアルトは、右手の方に曲がっていく。彼の後に続こうとして、アイリーシャの耳にも聞こえてきた。
激しい犬の鳴き声だ。
「――ルル!」
エドアルトを追ってその路地に入り込んだ時――そこでの光景に既視感を覚える。
(これは……)
道端に倒れていたのは若い男だった。そして、その側で鳴き声を上げているルル。
公爵邸の中を流れる小川のほとりと下町と。場所も違う。倒れているのも男女で違う。
――けれど。
倒れている青年の側にかがみこんだエドアルトは、唇を引き結んで立ち上がった。
「呼吸はしている、脈もある――意識がない。同じだ」
「……なんで?」


