転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく

 歩きながら、何気ない口調でエドアルトは口を開いた。

「最近、バートン伯爵令嬢以外にも、似たような事件が起きていると知っていたか?」
「……そうなんですか?」
「老若男女、問わず、倒れた後は意識が戻らないらしい。医師が診察しても、異常はなく、神殿で回復魔術を施してなんとか持たせている」
「アデル嬢と同じ症状ですね……」

 こうなってくると、病気ではないだろう。

(……極端な話になってしまうけれど、魔神が関わっている……とか?)

 いつか、蘇るであろう魔神と対決するのが役目。
 聖女としてその役を果たせと言っている割に、神様はアイリーシャにはたいした情報を渡してくれなかった。アイリーシャが"隠密"を完璧にこなせるようになった後は、姿も見ていない。

「神殿で話を聞く……ってことはできますか?」
「それは難しいだろうな」

 歩きながら話をしている二人は、いつの間にか祭りのことなんて頭から消え去っていた。どうにかして、この謎を解くしかないのだ。

「……難しい、ですか」