「一緒に誘拐された相手のことを覚えているのか」
「殿下」
そう言いかけたら、目つきが若干鋭くなった。
「ええと、エドアルト様。正確に覚えているわけじゃないんですけど――でも、誘拐されたのは、あのあたりだった気がします」
あの男の子が一緒に誘拐されたアイリーシャを、懸命に気遣ってくれたのは覚えている。
あの時、絶対に彼を守らないといけないと思ったことも。
アイリーシャには魔力を暴発させる程度の能力の持ち主という噂はついてしまったけれど、実際にはきちんと制御していたわけで、問題はないと思っている。
それに、あの事件がきっかけでミカルに指導をしてもらえたのだから、よかったと言えばよかったのだ。
「ところで、アイリーシャ。それは、どうした」
エドアルトの視線が足元に落ちる。彼の視線を追うように頭を下げ、アイリーシャは目を丸くした。
「……え、ルル?」
街中で迷子になったら困るからと、今日はルルは家に置いてきた。それなのに、今、足元に行儀よくお座りをして、ちぎれんばかりに尾を振っている。
「あなた、また逃げてきちゃったの?」
「逃げてくるって?」
「殿下」
そう言いかけたら、目つきが若干鋭くなった。
「ええと、エドアルト様。正確に覚えているわけじゃないんですけど――でも、誘拐されたのは、あのあたりだった気がします」
あの男の子が一緒に誘拐されたアイリーシャを、懸命に気遣ってくれたのは覚えている。
あの時、絶対に彼を守らないといけないと思ったことも。
アイリーシャには魔力を暴発させる程度の能力の持ち主という噂はついてしまったけれど、実際にはきちんと制御していたわけで、問題はないと思っている。
それに、あの事件がきっかけでミカルに指導をしてもらえたのだから、よかったと言えばよかったのだ。
「ところで、アイリーシャ。それは、どうした」
エドアルトの視線が足元に落ちる。彼の視線を追うように頭を下げ、アイリーシャは目を丸くした。
「……え、ルル?」
街中で迷子になったら困るからと、今日はルルは家に置いてきた。それなのに、今、足元に行儀よくお座りをして、ちぎれんばかりに尾を振っている。
「あなた、また逃げてきちゃったの?」
「逃げてくるって?」


