十年前、ちょうどこのラベンダー祭りの日に拉致されたから、両親は嫌がるだろうと思っていたけれど、今のアイリーシャは違う。自分の身ぐらい守ることができるからと外出の許可が下りた。遠巻きに、護衛もついてくれるから安心だ。
(アデル嬢にポプリとか探そうかしら。眠っている間も、香りは感じられるかもしれないし)
神殿に届けたら、彼女の枕元に置いてもらえるだろう。
食べ物を届けても食べられないし、美しい花も見ることはできない。でも、香りならきっと楽しむことができる。
アイリーシャが馬車を降りた時には、街はもう多数の人でにぎわっていた。
「夕方、別宅の方に迎えに来てね」
「かしこまりました」
御者と待ち合わせ場所を打ち合わせてから、ぐるりと周囲を見回す。
王宮前の広場には、たくさんの屋台が出ていた。
この景色が、懐かしい。十年前、たった一度見ただけなのに、こんなにも懐かしく感じられるのはなぜだろう。
アイリーシャは、屋台に足を進めた。可愛らしい袋につめられたポプリだの、アロマスプレーだの、ラベンダーを含む商品がずらりと並んでいる。
「お嬢さん、これなんてどう?」
(アデル嬢にポプリとか探そうかしら。眠っている間も、香りは感じられるかもしれないし)
神殿に届けたら、彼女の枕元に置いてもらえるだろう。
食べ物を届けても食べられないし、美しい花も見ることはできない。でも、香りならきっと楽しむことができる。
アイリーシャが馬車を降りた時には、街はもう多数の人でにぎわっていた。
「夕方、別宅の方に迎えに来てね」
「かしこまりました」
御者と待ち合わせ場所を打ち合わせてから、ぐるりと周囲を見回す。
王宮前の広場には、たくさんの屋台が出ていた。
この景色が、懐かしい。十年前、たった一度見ただけなのに、こんなにも懐かしく感じられるのはなぜだろう。
アイリーシャは、屋台に足を進めた。可愛らしい袋につめられたポプリだの、アロマスプレーだの、ラベンダーを含む商品がずらりと並んでいる。
「お嬢さん、これなんてどう?」


