転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく

 四大属性魔術の中にも、肉体をいやすための魔術は存在する。
 そして、創世神を奉る神殿の神官達は、回復魔術を得意とする者が多かった。

「神殿でも、原因は不明なんですか?」
「ああ――極端に生命力が落ちているそうだ。今は、神殿の神官達が、朝晩回復魔術をかけることによって、どうにか命を長らえているというところらしい」
「……そう」

 アイリーシャの表情が曇った。
 ゲーム内にて、モニカが使用していた神聖魔術の使い手は、今は存在しないとされている。
 魔神が出現するならば、知識はあった方がいいだろう。
 アイリーシャなら使うことができると思って、資料を探してみたけれど、魔術研究所の資料室にも、神聖魔術を使えるようになる方法については記されていなかった。
 表情を曇らせた娘を気遣うように、父が肩に手を載せる。

「それより、祭りを見学に行くんだろう。気を付けて行ってきなさい」
「はい、お父様」