その場の空気を読んだのか、ルルはアデルが運ばれていく間もおとなしく座っていた。
アイリーシャは、ルルの方を振り返った。
「あなたは、部屋に戻ってもらうわよ。どうしてこう脱走癖がついてしまったのかしら」
指を振って見せると、しゅんとして尾を丸める。
こうして、アイリーシャの誕生日は、少々不幸な出来事があったにせよ成功に終わった――と思っていたけれど。
物事は思いがけない方向に進み始めているということに、誰も気づいていなかった。
◇ ◇ ◇
アイリーシャの誕生日からひと月が過ぎようとしているけれど、あの日倒れたバーデン伯爵家の娘、アデルの意識はまだ戻らないらしい。
「……え? アデル嬢、まだ意識が戻らないの? 神殿に行ったのに?」
父からそう聞かされて、アイリーシャは目を見張った。
自分の誕生日に倒れたということで、責任感を覚えたアイリーシャも見舞いに行ったけれど、神殿に運んで治療を受けているということで、会うことはできなかった。
(お医者様では治療ができないから、神殿に運んだと聞いていたけれど……)
アイリーシャは、ルルの方を振り返った。
「あなたは、部屋に戻ってもらうわよ。どうしてこう脱走癖がついてしまったのかしら」
指を振って見せると、しゅんとして尾を丸める。
こうして、アイリーシャの誕生日は、少々不幸な出来事があったにせよ成功に終わった――と思っていたけれど。
物事は思いがけない方向に進み始めているということに、誰も気づいていなかった。
◇ ◇ ◇
アイリーシャの誕生日からひと月が過ぎようとしているけれど、あの日倒れたバーデン伯爵家の娘、アデルの意識はまだ戻らないらしい。
「……え? アデル嬢、まだ意識が戻らないの? 神殿に行ったのに?」
父からそう聞かされて、アイリーシャは目を見張った。
自分の誕生日に倒れたということで、責任感を覚えたアイリーシャも見舞いに行ったけれど、神殿に運んで治療を受けているということで、会うことはできなかった。
(お医者様では治療ができないから、神殿に運んだと聞いていたけれど……)


