「君、馬鹿?」

 はん、と猫が鼻を鳴らす。愛美の死の原因となったくせに、悪びれる気持ちはないらしい。

「そんなねー、都合よくいくわけないじゃない。モニカを見守るためには、君がしっかりと"アイリーシャ"としての役を果たさないと」
「……でも、転生先はモブキャラだって言ってたじゃない! 公爵家の娘のどこがモブ?」
「やー……ゲームの時代ではモブだけど、今の時代は違うからねぇ……」

 ぷいっと横を向いた神様は、そしらぬ顔で尾を揺らす。なんだかとっても腹立たしい。

「だったら、モニカたんと同じ時代の名もない一学生だってよかったじゃない……なんで、公爵家令嬢からやり直しなのよ……」

 アイリーシャは、床の上にひっくり返ってじたばたした。公爵家の娘だなんて、いろいろ面倒に決まっている。

「そりゃ、我だって全能ではないからねぇ……」

 今度は露骨に視線をそらされた。ひょっとしたら、名もない一学生に転生すればよかったという事実に、今思い至ったのかもしれない。

「……それで私はどうしたら」