使用人を呼ぼうと見回すと、騒ぎに気付いたらしい父がこちらに向かってくるのが見えた。
「殿下、お騒がせして申し訳ありません。アイリーシャ、何があった」
「お父様、急病人のようです。お医者様を手配してください」
父にうなずいて見せたエドアルトは、ルルの方に向き直った。
「――人が倒れているのに気づいて、声を上げたというわけか。お前は、賢いな」
誉められたことはわかったらしく、ルルはエドアルトに尾を振っている。頭を撫でられても、嫌がる気配はなかった。
(そうよね、ルルは賢い。毎回部屋から脱走するくらいだもの……脱走は困るんだけど)
ルルの頭を撫でているエドアルトの目元が、ほんの少し柔らかくなっている。
"氷"と彼のことを呼ぶ人も多いけれど、気を許していい相手として認識されていないだけではないだろうか。
だって、アイリーシャの兄と一緒にいる時とか。今、こうやってルルを撫でているところとか。
わかりにくいかもしれないけれど、確かに彼の表情は変化している。ヴァレリアにしているように、最初から壁を作っているわけでもない。
「まあ、アデル!」
「殿下、お騒がせして申し訳ありません。アイリーシャ、何があった」
「お父様、急病人のようです。お医者様を手配してください」
父にうなずいて見せたエドアルトは、ルルの方に向き直った。
「――人が倒れているのに気づいて、声を上げたというわけか。お前は、賢いな」
誉められたことはわかったらしく、ルルはエドアルトに尾を振っている。頭を撫でられても、嫌がる気配はなかった。
(そうよね、ルルは賢い。毎回部屋から脱走するくらいだもの……脱走は困るんだけど)
ルルの頭を撫でているエドアルトの目元が、ほんの少し柔らかくなっている。
"氷"と彼のことを呼ぶ人も多いけれど、気を許していい相手として認識されていないだけではないだろうか。
だって、アイリーシャの兄と一緒にいる時とか。今、こうやってルルを撫でているところとか。
わかりにくいかもしれないけれど、確かに彼の表情は変化している。ヴァレリアにしているように、最初から壁を作っているわけでもない。
「まあ、アデル!」


