転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく

公爵邸の庭園は、庭には池や小川まである贅沢なつくりだ。その小川の側に、一人の少女が倒れていた。
 ピンクのドレスが地面に広がり、その側で、ルルが激しい声を上げている。
 アイリーシャ達が近づくのを見て、ようやくルルは鳴くのをやめた。

「なんで!」

 思わず、声が漏れる。

(……招待客よね、彼女……)

 招待客が、なぜ、このようなところに倒れているのだろう。

「気をしっかりもってください、大丈夫ですか?」

 アイリーシャは彼女の側にかがみこんだ。
 エドアルトも同じようにアイリーシャの側にかがみこむ。声をかけたが返事はないと知ると、手首をとって脈を確認し始めた。
 よく見れば、わずかに胸が上下している。だが、エドアルトの問いかけには、ピクリとも反応しなかった。

「怪我はなさそうだ。だが、頭を打っている可能性がある。医師が来るまで下手に動かさない方がいい」

 今日は暖かいが、地面に倒れている彼女の身体は冷え始めている。エドアルトは、自分のマントを脱いで、彼女の身体にかけていた。

「す、すぐに手配します」