「あなた、なんとも思わないの? 殿下は、私の誕生日にいらしてくださったのよ、公務に代役を立ててまで」
「私なら、公務を優先していただきたいと思います」

 アイリーシャの反論に、ヴァレリアはきりっと眉を吊り上げた。せっかく整った顔立ちの持ち主なのに、せっかくの美貌が台無しだ。

(でも、ここで面倒なことになっても困るし……)

 どうやって、この場をおさめようかと首をひねっていたら、救いの手が差し出された。
 いや、これを救いの手と言ってしまっていいのだろうか。

「リーシャ。殿下がお見えになったぞ」

 と、三兄のヴィクトルが呼びに来る。

「――あまり時間がないんだ。少し、話がしたくて寄っただけだから。贈り物は、ルジェクに渡してある」
「あ……ありがとうございます」

 公務の合間に立ち寄るとは想定外だった。

(候補者達には、公平にしておけってことかしら……!)

 先ほど、ヴァレリアは誕生日にエドアルトが来てくれたと自慢したばかりだ。ヴァレリア一人の誕生会に顔を出すと不公平になるとか、そういう問題が発生するのだろうか。