前世がお嬢様、現世でもお嬢様であるにも関わらず、乱暴な言葉が飛び出てきた。

「そうよ、モニカたんを遠くから見守る玉……玉なら、人の目にも見えないし……モニカたんだけ見ていられればよかったのに……! なんで、公爵家の令嬢なのよ……!」
「それも我、説明したって言ったじゃん」

 前世のアイリーシャにとって、ゲームの主人公キャラ――デフォルトネームは、モニカ・ネーヴィル――は、最高のキャラであった。
相手役なんぞどうでもいい、ひたすらヒロインを愛でさせろと、全ルート攻略したのは、できるだけ多くの表情を見たかったから。
 ゲームを勧めてくれた友人に話したらドン引きされてしまったが、"モニカたん"と呼んで、攻略対象者達のスチルではなく、主人公のスチルを舐めるように眺めていた。
アイリーシャが"玉"に転生するはずだったに……と何度も口にしていたのは、モニカを遠くから見守る存在として転生したつもりだったからだ。

(そうだそうだ、そうだった……!)

 何やらごちゃごちゃと条件をつけられたような気もするけれど、すっかり忘れていた。
 あまりのことに、頭を抱え込んでしまった。