学校で友達と喧嘩したこと、宿題を忘れてしまって、慌てて授業の始まる前にやったこと。
 そんなことを夜寝る前、ベッドの中でぬいぐるみに語りかけていた。
 今にして思えば、"友達"としてぬいぐるみを見ていたのだろう。自分には、心から打ち解けることのできる友人はできないと思っていたから。

「うん、君の名前はルル。決定! 首輪もちゃんとつけようね」

 綺麗に洗って、艶々の毛並みになったルルを連れて階下に降りる。階下の居間には、王宮の騎士団寮で暮らしているヴィクトルをのぞき、家族全員が集まっていた。

「まあ、可愛い!」

 ここでもルルは両親に愛想を振りまき、母はルルを見るなり目尻を下げた。ソファに座っている母の側に駆け寄ったルルは、膝の上に座りたそうに母の膝に手をかけている。

「大きくなりそうだな。毛並みもいいし……ちゃんと面倒を見るんだぞ」
「いいの?」

 まだ、話をしていないのに、もう許可が出ている。

「ルジェクとノルベルトから聞いている。二人に感謝するんだな」
「お兄様達、ありがとう!」
「リーシャが飼いたいというんだから、いいだろう。飼い主が見つからなかったら、だぞ」