手を伸ばして、アイリーシャの腕から取り上げようとするので、慌てて背中を向ける。

「――もー、お兄様達あとにして! 綺麗に洗って、ご飯をあげてからよ!」

 くぅんと小さく犬が鳴く。
 浴槽に浅く湯を張って、そこに犬を入れた。泡立てた石鹸で、汚れた毛並みを洗う間もおとなしくされるままだ。

「いい子ねー、名前は何がいいかな」

 尾が揺れると、水しぶきが跳ねる。その様子を見ていたら、先ほどのエドアルトの顔を思い出した。
 あまり表情がないかと思っていたけれど、ちゃんと年相応の表情もする。
 深くかかわり合ったわけではないけれど、彼に表情があるのを見て、ほっとしたというかなんというか。

(……別に、だからどうってわけでもないんだけど)

 思いがけない表情を見せられて、どきりとしたとか――そんなことはない。頭を振って、エドアルトの顔を追い払った。

「うん、綺麗になった。君の名前は――ルルにしよう!」

 それは、アイリーシャが前世で買ってもらったぬいぐるみにつけた名前だった。特に、意味のある言葉ではない。
 ただ。