両親は愛想よくふるまうことを望んでいたけれど、必要以上に気に入られたら面倒なことになると思っていた。

「父上は、もう少し笑えと言うんだがな」
「そうですね……」

 たしかに、もう少し笑顔を見せたら、大騒ぎになりそうな気もする。今だって、彼を囲む人の輪はとても大きいのに。

「笑おうとすると、ここが引きつるんだ」
「そんなものですか?」

 顔をさしたエドアルトは、少し困ったように見えるのはなんでだろう。
 エドアルトに別れを告げ、家まで戻る。

(お土産は、今度ゆっくり探したらいいわね)

「リーシャ、遅かったな――って、何抱えてるんだよ!」

 出迎えに出てきた長兄のルジェクが、アイリーシャの腕の中にいる子犬を見て、声を上げる。

(勝手に連れて帰ってきたのは、まずかったかな……)

 どうしようかと思っていたら、ルジェクはアイリーシャの方へ手を伸ばした。

「ちっちゃいなあ、可愛いなぁ。俺にも抱かせてくれよ」
「ルジェク兄様、犬が好きなの?」

 犬も、ルジェクを見て怯えている気配はない。