丸まっていた白猫は、ベッドの上にきちんと座りなおした。尾は長く、目は左が青で右が金のオッドアイだ。

「神様って……あーっ!」

ひょいと後ろに飛びのいた猫は、「ひどいなぁ」と笑った。
 猫のくせに、実にいい笑顔である。丸めた尾の先でぱたぱたとベッドを叩いているのが、なんだかアイリーシャをいらだたせる。
この部屋には誰もいないのをいいことに、アイリーシャは猫に詰め寄った。

「思い出した! 嘘つき! "玉"に転生させてくれるって言ってたのに! なんで、アイリーシャに転生しているのよ!」
「我はちゃんと説明したよ? 玉になる前に、アイリーシャとしての人生を全うしないといけないって」
「そ、そうだった……?」

 実はこの猫。
前世のアイリーシャ――愛美――死亡の原因となった神様である。
 その日、愛美は両親に連れられて、船上パーティーを訪れていた。
パーティーに行ったと言えば聞こえはよいが、実際のところ政略結婚の相手を見繕うための愛美売り出しの場であった。
 外の空気を吸いたいからと甲板に出たところ、海に転げ落ちそうになっている猫を発見。