転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく

 アイリーシャの使命について、誰にも知られるわけにはいかないから、他の人の手を借りて調べるわけにはいかない。
 それはともかく、今日は仕事のあとダリアとミリアムと待ち合わせをしている。
 二人とも王宮に行儀見習いとしてあがっているのだけれど、午前中からの勤務の日には、午後には時間が取れるのだ。
 二人とも時間を合わせてくれたから、久しぶりに三人で会える。
 時計を見れば、そろそろ出ないと待ち合わせの時間に送れてしまいそうだ。ちょうど区切りもいいことだし、と後片付けをして書庫を出た。
 待ち合わせ場所に選んだのは、王宮前の広場だった。十年前、アイリーシャが誘拐された場所だ。
 あの時とは違って屋台は出ておらず、人が行き来しているだけだ。

「待った?」

 待ち合わせ場所に、最初についたのはアイリーシャだった。後からやって来たダリアとミリアムは、いつもより地味目の服装だ。
 王宮では、あまり派手な服を着ていると、先輩侍女に目をつけられるらしい。

「ううん、待ってない。それで、今日はどこを案内してくれるの?」