転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく

「今は魔力が少なくて発動できないとされている人も、魔術を使えるようになるかもしれませんからねぇ……」
「そうですね、努力します」

 努力はするけれど、置かれている書物の数を考えたら、ものすごい時間がかかるのは間違いのないだろう。

「では、私はこちらを持っていきますね。災厄について記されているようですから」

 一冊の本を取り上げたミカルは、書庫を出て行ってしまう。

(先生って、ずっと努力を続けているのよね……)

 十五で宮廷筆頭魔術師になったミカルは、今でも研究を続けている。こうして魔術研究所にこもっている時以外も、常に研究しているのだとか。

(私が神聖魔術に目覚めていないのもそうなんだけど、聖槍が見つかってないのよねぇ……)

 ゲームの中、戦乙女が使っていた聖槍。神から与えられたというその槍についての情報はまったく見つかっていない。
 手がかりさえも与えてくれなかったのだから、神様もたいがいだと思う。

(今度の休みの日には、教会に行ってみようかな……一般人が見られる資料は限られているのはわかっているけど、ヒントくらいはあるかも)