転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく

「若干不安とか言うな。威力を制御するのが苦手なだけだ」

 エドアルトがむっとした顔になる。

(……あら、こんな顔もするんだ)

 兄といる時のエドアルトは、とても気楽な様子だ。内面を面に出すことを恐れていないというか。
 無表情を貫いていると、実年齢より上にも見えるけれど、今は、年相応の表情だ。

「魔力の制御が苦手って……?」

 アイリーシャの疑問に直接答えることなく、ノルヴェルトはエドアルトの剣を丁寧に見ている。それから、工具を取り出すと、あちこち手を加え始めた。

「思っていた以上の大惨事になることが多いな。それで、剣術に特化することにした」

 手入れを終えた剣を、ノルヴェルトがエドアルトの手に戻す。

「ノルヴェルトに作ってもらったものだ。俺の魔力に一番馴染む」

 剣を握ったエドアルトが、小さく息を吐いた。
 鋭い刃に、薄く氷の膜が張っていく。さらにその冷気は周囲の空気まで巻き込んでいった。小さな氷の粒が、刃の周囲で煌めき始める。

(……綺麗)

 思わず彼の剣を見つめた。絶対なる氷の貴公子。