(私は、妃になるつもりはないし……一抜けたってわけにはいかない……だろうなー)

 これから先、待ち受けている未来のことを思えば、エドアルトの妃の座を争っている余裕などない。もっと強くならなくては。

(――三百年後に備えないとだものね……!)

 その前に、せっせと一生分働かなくてはならないのは理不尽ではあるけれど、三百年後に期待をつなぐしかないだろう。

「お父様、お母様。私、あちらに行っているわね」

 するりと存在感を消して壁と同化。踊っている人達もいるが、ダンスには興味ない。

(……王子様も大変よね)

 挨拶を終えたらしいエドアルトの周囲にはまたもや令嬢達が群がっているが、ものの見事に表情が消えている。
 前世の自分を思い出して、ちょっぴり彼に同情した。